特集76-2 株式会社crescereのご紹介

株式会社crescere

 「このお店をやってみない?」と前のオーナーに言われたのは、cクレッシェレrescereで働き始めて10年ほど経った頃。18歳で沖縄から上京後すぐに入社し、美容師として歩んできた杉山陽子さんは、そんなせっかくの誘いも「怖くて逃げ回った」と振り返ります。
 「18歳で働いた当初は道具の名前すら分からず、立ち尽くす日々でした。でも、そんな私を優しく育ててくれたお客様が何人もいたんです」。経営を引き継がなければ店は閉店。お客様たちはどうなるのか。悩んだ末に「やってみます」と答えたそうです。とはいえ、当時はカリスマ美容師ブームも去り、スタッフも転職していくなど人手不足に悩まされました。次第に経営の持続が困難になり、自身の給料も確保できず、住居の家賃が払えなくなったこともあったとか。
 「美容師は営業後に練習があって帰宅が夜遅く、土日も出勤。とくに女性は結婚を機に事務職やパートに転職する人が多く、ハローワークでも『美容師の求人は厳しい』と言われたんです。当時、私は未婚でしたが、仕事と子どものどちらかを諦めたら、いつか自分の歩んできた道を後悔すると思いました。仕事を続けながら子どもを持つという選択は私にとっては絶対。次第に子育てしながら美容師を続けられる働き方を考えるようになったんです。そこから『ママさん美容師』の求人広告を出すことを思いつきました」。美容師に戻りたくても戻れない女性の受け皿を作ることが抱える問題解決の糸口になると考えたのです。 「今なら子どもがいない私がフォローできるし、逆の立場になったときは助けてもらえる。そんな思いもありました」。その2年後、杉山さんも結婚。「女性が長く美容師として働ける場をつくりたい」という思いは、より強くなりました。

現在働く正社員の1人は、妊娠を機に前の職場を休むように言われ、生活の不安を感じ、美容師を続けるか悩んでいたそうです。それを知った杉山さんは早速、正社員で迎え入れ、産休が取れるように尽力しました。その後、杉山さん自身も2022年に沖縄で里帰り出産。1年の産休・育休を取得しました。「ところが経営者は雇用保険の対象外。育児休業手当などが支給されず、予想外の壁に苦しみました。ただ、スタッフが『店は守ります』と言ってくれたお陰で、休業はせずに済みました」。驚くべきことに、当時6人いたスタッフ全員が次々と妊娠。交互に産休・育休を取りながら店を支え合ったそうです。
お客様もママが多く、育児の悩みや病院の情報交換などの話題で盛り上がるそうです。「当初はキッズルームの設置も考えましたが『ここに来るのが唯一の自分の時間』と言ってくださるお客様も多く、別の形で快適な空間を目指すことにしました」 営業時間は保育園に合わせ17時まで、祝日は定休。日曜は交代や月ごとに調整し休みを取っています。「とはいえ出産後は会社員の夫が昼夜問わず働き、週末は子どもを見てくれているんです。本当に感謝しています。家族3人が揃う時間が少ないので、その課題は解決していきたいですね」。

「最初は自分と家族が幸せに暮らせればと思って始めたんです。それが、感謝の声が増えていくうちに誇りへと変わっていきました。今はもっと多くの人を笑顔にしたい、自分に何ができるだろうと考えるようになっています」

 現在は正社員3人体制。LINE予約を導入し業務の効率化等を図るほか、区の補助金で最新のシャワーヘッドを設置しました。「導入後、お客様から嬉しいお声をたくさんいただいております。洗髪やドライの時間短縮にも繋がり、設備投資も大事だと思いました」。目下の課題はスタッフの増員。「1人休むとギリギリで。産休などを取るには厳しい状況です」。今後は夜や日曜勤務が可能な人材も確保し、『ママさん美容師』と両軸での営業を視野に入れています。「お勤め帰りの方にも対応したいし、日曜に働ける人が入れば、定休日をなくして週休3日も実現できます」。 目標はスタッフの給料アップと就業時間の短縮。「もっと経営を学び、みんなが幸せになれる仕組みをつくりたい。現場に立つのは好きですが、経営者としての鋭い視点が必要です」。
 「いちばん大切なのはやっぱりスタッフ。職場の人間関係が円滑だと考え方も前向きになり、仕事もうまくいくと思うんです。やり方は一つではないので、お客様もスタッ
フも素敵な時間を過ごせる場所になるよう、経営者として常に前を向き、進めていきます」。

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