特集77-1 竹工芸家 初田 徹さんをご紹介

人や文化のつながりを大切にし
竹の魅力、自然の素晴らしさを世界へ
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『五種竹組小筐』東日本伝統工芸展入選作品
『五種竹組小筐』東日本伝統工芸展入選作品

 初田徹さんが竹工芸家の道を志したのは、大学4年のとき。2001年の夏、就職活動に違和感を覚え、1年間休学していた頃でした。ふらりと入った竹工芸のお店に惹かれ、足を運ぶうちに、店主で竹工芸家の田中旭祥氏と出会い、作品の持つ力に強く心を動かされたといいます。「直感的に」自分の進むべき道と感じ、大学在学中の2002年5月、田中氏に師事。約3年間、直接技術を学んだ後も師匠やギャラリー、茶道の先生など周囲に学び、研鑽を重ねました。そして、2010年、2011年と続けて東日本伝統工芸展で入選。注目の作家となったのです。
 転機は修行を始めて10年後の2012年。このまま人間国宝や師匠の田中氏も所属する日本工芸会への入会を目指すべきか、独自の道を進むかを悩んだ末に、初田さんは独自の道を歩むと決意しました。その頃には、茶の道具づくりに力を注いでいたこともあり、「茶の道具は代々受け継いで制作しているところも多く、そこでは歴史や伝統を守りながら、家元の好みなども反映して作られています。ほかの道具との調和も求められるため、私自身はそうしたものを意識した上で、自分の描く理想的な美の形と歴史に引き継がれてきた形との接点を探って創造しています」。

普通の大学生が竹工芸と出会い唯一無二の竹工芸家へ

 2017年にはオーストラリアのビクトリア国立美術館に作品が収蔵。海外でも高く評価されています。「2008年制作の作品を、2016〜2017年の同館での展示と寄贈の為にキュレーターとお客様が来日され、ご購入くださいました。評価されるのに9年かかっています」。
 だからこそ先を急がず、わが道を行く。今やっていることは5年後、10年後のための蓄積と考えています。短期で成果を出すことは自分にはきっとできない、と初田さん。「祖父母らとも暮らしてきた世田谷は、今も自然が残る場所。ゆっくりと変化してきた景色や時間軸の中で生き、考えてきたからかもしれません」。

竹の素晴らしさを伝え美しい自然環境を守りたい
『雨晴』(https://www.amahare.jp/)店内で金子さんと

竹工芸を続ける原動力は、自分の作品を通じて、竹の素晴らしさを知って欲しいから。若い頃から、まとまったお金が入るとよい竹を買い、ストックしているそうです。
「竹工芸に使う竹は、丁寧に育成・管理された貴重なもの。産地や太さ、節の高さのほか、一本一本に個性があります。竹害という言葉も聞きますが、それは人間側の問題。人間だけが得することはできません。自然や生き物とつながってこそ意味があります」。
 紙に描いた設計図に合う竹を当てはめて作品を作ることもありますが、竹を見て発想することも多いとか。竹の力を借りてこそ、自分の実力以上の作品を目指すことができるそうです。2011年の入選作では5種類の竹を使用。「東京世田谷にいることで、全国の竹に意識が向きました」と語ります。

竹のようにしなやかに文化を未来へつなぐ

現在は白金台のギャラリー『雨晴』(あまはれ)などで初田さんの作品を購入可能です。「茶の道具は、茶杓(ちゃしゃく)だけあっても意味がありません。他の方の作品も一緒に見ていただくことで成り立つもの。竹の文化も鉄や木の文化と共に育ち、残っていくのだと考えています」と初田さん。『雨晴』の金子憲一さんは、竹そのものへの愛情が作品にあふれていると話します。
 竹のように、風が吹いても雪が降ってもしなやかに続けていきたい、と語る初田さん。「今はインバウンドなどもあって工芸に追い風が吹いていますが、そうでない時期も必ず来ます。そのときも継続していくことが文化を残すことにつながると思うんです」。
 世田谷の魅力は、「都内のギャラリーはもちろん、京都や海外にもすぐ繋がれるアクセスのよさと、自然も残っているところ」。
世田谷の自然と都市が共存する環境は、世界へつながる創作の源となっているようです。

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